書評 | レビュー | 生まれてこない方が良かったのか? 生命の哲学へ!

2023/08/04

書評 哲学 反出生主義

おすすめする方

論理的な考え方ができて生きてるのが辛い方、哲学初心者

前者は過去の私、後者は現在の私に該当します。

本の評価

★★☆☆☆ 特定の人におすすめしたい。繰り返し読む価値がある。(リンク先に評価基準を記載)

筆者自身の病や環境から、生まれてこないほうが良かったのか?を問い続けてきたそうです。
生きていれば誰しもが一度くらいは考えたことがあるかもしれない。
歴史的にも普遍的な問いであることを教えてくれます。

読みやすさ

全体的に宗教的な専門用語を主とした難しい言葉が出てくるので、検索しながら読むことになります。
3章4章は内容把握が難しいです。

書評者情報

所要時間:7時間57分
読書周回数:1回
ポジション:哲学初心者。自分の思想が反出生主義であるか?という疑問をもった人。自分の思想的立ち位置を明らかにするため、反出生主義に関する知識を得るために読みました。自分の思想は輪廻を信じていない原始仏教信者、というのが一番近い思想的立ち位置でしょう。

補足資料


上は著者出演の動画です。2章のベネターの誕生害悪論がトピックに上がります。

出生時同意不在論について以下補足意見があるので一読をおすすめします。

書誌情報

筆者

森岡正博

形式

紙/電子書籍(Kindle/Koboにて確認)

構成

楽天KoboやAmazon Kindleなどの立ち読み機能で目次や「はじめに」を確認できます。
「はじめに」には各章の概要が記載されているので、確認することをおすすめします。

ボリューム

ページ数:353ページ
筆者の主張したい内容は7章のみなので、前章までの内容について既知である場合は飛ばして読んでしまっても問題なさそうでした。

読書メモ

はじめに

ベネター≒進撃の巨人のキャラ「ジーク」

1章 おまえは生きなければならない!

個人/全人類レベルで生まれてこなければよかった、ということがあることを説明

2章 誕生は害悪なのか

ベネターの誕生害悪論を中心に話が展開される。
良いこと/悪いことを不連続の単一のものとして捉えていることから、ベネターには同意できない。

3章 ショーペンハウアーの反出生主義

本書の難関。P106「超越論的統覚」がよく分からない。
反出生主義を突き詰めると達成しえないのではないか?という提案をしてくれたのが印象に残っている。

4章 輪廻する不滅のアートマン

本書の最難関。P111「アートマン」がよく分からない。

5章 ブッダは誕生をどう考えたのか

4章の後ということもあり内容を理解しやすい。1番共感できる章。

6章 ニーチェ-生まれてきた運命を愛せるか

5章に引き続き6章も内容を理解しやすい。1番印象に残った章。

運命愛や永遠回帰の考え方によって生き辛さが改善する人は一定数いそう。
逆にこのような理屈に依った考え方でもないと生を肯定できなさそうという話でもあるが。

「在るところのものに成ることを欲する」の理解度が7章の理解度にも関わってくる。

P255 主題と関係ない政治的な話になるが、南京大虐殺が事実として捉えられていることが気になる。

7章 誕生を肯定すること、生命を哲学すること

出生時同意不在論、脳死は死か?、AIの身体性不足あたりがホットなトピックとして挙げられる。
出生時同意不在論は補足資料参照することをおすすめする。
脳死は死か?は本書を通じて時折トピックとして挙がっていた息の話の延長線上にあることが感慨深い。